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◆ 九頭竜川の奇跡 ◆


【九頭竜川のサクラマスは釣れる、、、、、、? 】

  ここ数年、九頭竜川でのサクラマス釣りが各マスコミで紹介されています。
 何せ、平均50センチは超えようかというトラウトです。ビデオでもご覧になった方も多いと思います。
そんな大物が簡単(?)に釣れてしまうと思うものだから、今や全国からルアー&フライマンはこぞってここに集う。

  しかし、しかしです、皆さん、よく聞いて下さい。

《 九頭竜川で、サクラマスは、ほとんど釣れません、、、。 》

  こんなことを言うと、地元の漁協さんに怒られるでしょう。また、反論される方もいらっしゃるでしょう。でも、これは独断と偏見かもしれませんが、ほとんど事実だと私は確信しております。
 この位覚悟しないと、とても精神的にはもたないのです。
 もちろん、一部のプロ、準プロの方々でそれなりに釣っている方々はいらっしゃいます。が、一般的にはつり上げるのは至難です。

  私のごく親しい友人で、ルアーのかなりの上級者がおります。彼はここ五、六年九頭竜川で挑戦中ですが、いまだ吉報はありません。
  具体的にいうと、目下約三十数連敗中なのです。
 彼はサクラマス釣を非常によく研究しております。
 もちろん、その使用タックル、ルアーは完璧かと思われます。それでも釣れないのです。
その操作方法の簡単さなどからいって、一般的にはフライよりルアーの方が、釣れる確率は高いと思います。それでもダメなんです。

  私のよく知っているプロのフライマンも、何十回と行っていると思いますが、一昨年ようやく釣れました。また、私の知り合いの他のフライマンでは一人を除いて、まだ誰も釣っておりません。皆ダブルハンドの中級以上の実力者ばかりです。

  私が初めて九頭竜川に行った時。ちょうどその日、52センチを釣り上げたフライマンに会いました。
  彼はこれが約四十回目位で、やっと釣れたと言いました。
  よくも四十回も通ったものだと、私は感心しきりでした。
 傍らのルアーマンは、三年間挑戦して全く魚信がないと、けろっとした顔で言いました。

―― 皆さん、こんなもんです、九頭竜川は。釣れません。――

  あまりにもマスコミで騒ぎたてるので、「釣れる」と思って、全国から釣人達は素晴らしいタックルを持ってここにいらっしゃいます。
 でも、ほとんどの方は、釣れなかった言い訳をあれやこれや考えながら、とぼとぼとお帰りになっているのです。そんなもんです九頭竜川は、、、。

  何故そんなに釣れないのか?その主たる理由は、
 「単純に魚の数が圧倒的に少ないから」 と私は思っています。
 どんな名人が、どんな素晴らしい道具でトライしてみたところで、魚がいなければ釣れる訳はありません。


それと万一魚を掛けたとしても、

1、 サクラマスの口は柔らかく、ハリは外れやすい。
2、 激しいローリングによりばれやすい。
3、 川の流れは速く、複雑なのでとりこみが難しい。

  以上のような理由で結局は、ばらしてしまう事が多いようです。
  よほど自分の精神状態をコントロールしないと、とてもここでの釣りはできません。そのぎりぎりの精神を保持した者だけに、サクラマスは微笑んでくれるのです。

  と、という反面、超ラッキーな人間も世の中には存在するという事実を次のコーナーでご紹介します。

 


【 奇跡は起こった ! Part1 】

  私が初めて九頭竜川に行ったのは、1994年のの二月。
 ここでのサクラマス釣りが、そろそろ全国的に有名になりだしている頃だった。
 前述したとおり、そう簡単には釣れないと、否、ほとんど釣れないものだと私は覚悟していた。

 その年の4月始め、仕事で福井近くまで来ていた私は、ちょっとのぞいてみるつもりで九頭竜川に来た。
 河原では、フライマンが長いダブルハンドロッドのキャスティングを繰り返している。
 話を聞くと、彼は群馬から来ていて、今日で五日目だが、全く何の当たりもないと嘆いていた。

 そうでしょう、はるばるご遠方からいらっしゃったのです。
  お嘆きはよく解ります。ご苦労様です。
 でも釣れないでしょう、と私は内心思った。
 
 その頃、私はまだフライのダブルハンドをやっていなかったので、彼のタックルを見て、
「こんな大袈裟な、高そうなタックルで、こりゃ大変だわ、、、。」と思った。

 私は彼に、「そう簡単にサクラは釣れるものではないですよ、、」と慰めた。

 自分自身ではあまり釣る気はなかったが、川を見ていたら、やってみたくなった。
 ちょうどその頃覚えたルアーのタックルが車にはいっていたので、
「ちょっと投げてみるか、、」と軽いのりで始める。
ウェーダーは履いたが、仕事帰りでネクタイはつけたままだった。

  やり始めて30分位、流心の流れが速くなっている所に、「1オンス、28グラム」の派手目のタスマニアンデビルを投げた。
  だいたい、ほとんどのルアーマンはミノー系か、スプーン系を使っているので、全く変わったルアーを使うのもよいだろうと、単純に思っただけである。

  流心とその脇の流れが緩くなっている所でターンさせた。

  と、急に「ゴンッ」と魚の当たりあった。

  私は「あっ何だこれは??」、

 「ボラかな? いや、ウグイか?」、
 「あれっ、尺ヤマメかな?」

 そして「ああ、これはニゴイに違いない」と思った。

 ボラ→ウグイ→ヤマメ→ニゴイと、私の脳裏を4匹の魚がかけめぐった。
 大本命のサクラマスは登場してこなかった。
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 引きは結構強いが、大したものではない。
  リールを巻いていると、ぎらっと光る魚体が見えた。
 その瞬間、頭がパニックとなった。

「あれはサクラだ!!!」と確信したのだ。

「いったい何故? 何故?」そればかりが頭にある。
 サクラは絶対釣れないと思っていたのだ。


 結局大したやりとりもなく、簡単にランディングできた。
 見るとトリプルフックが完璧に、上口と下口にフッキングしている。
 私はあまりにも簡単に、噂の「釣れないサクラ」を釣ってしまったので、訳がわからなかった。
 隣にいた、群馬のフライマンに写真を撮ってもらって、リリースした。

 57センチのそれは美しいサクラマス。

 群馬からはるばるいらっしゃったフライマンの、何ともいえない表情がやけに印象的だった。



 

【 奇跡は起こった! Part2 】


 1997年の三月の終わり、私は知り合いのプロのフライマンと、もう一人パワーウェットの達人と3人で、九頭竜川へ行った。

 プロの本職はロッドビルダーで、その頃、私は彼の製作によるダブルハンドを購入した。今回の釣行は試し釣りのつもりだった。
 私にとってダブルハンドは、若干キャスティングの練習をしただけで、実質的に生まれて初めての実践経験である。
 パワーウェットの達人は、過去多くのサクラマスを釣っており、その技術はプロ顔負けといってよい位だ。
 今回は大先輩二人のお手並み拝見、といったところで私も勉強のつもりだった。

 私は川で、達人がキャストしている隣に立ち、パワーウェットのテクニックを教えてもらう。
 一時間弱経ったところで、私もやってみたくなり、プロと達人がキャストしている同じ流れに、三番目にはいった。

 本来私は、ウェット釣りが大好きで、というかほとんどこの釣り方法しかやらないといってもよい位である。
 その拡大したダブルハンドによるパワーウェットは、その探れる範囲が広大で、
 「なるほどこれは面白いもんだ」と思いながら、下手なキャストを繰り返した。


 釣り始めて2、30分が経つ。

 フライがターンし終わって、リトリーブしようと思った時、私は何故かもう一度フライを送り込んだ。
  岸から3、4メートルの所だ。

 ロッドが、がくっとしなった。

 あきらかに大物のヒットだ。
 根掛かりではない。

 私は下で釣っている二人に、声をかけようかと一瞬迷ったが、大ウグイだったら恥ずかしいので、だまっていた。
  後で「若いねえ、ウグイと間違えるようでは、、、」と言われるのが目に見えている。

 その直後、銀色に輝く魚体が見えた。
 私は「来た!!」と大声で叫ぶ。

 二人が急いでリールを巻いて、こちらに向かっているのが見える。
「信じられない!いったいこれはどういう事だ!」私は動転した。

 達人は、「あせってはいかんよ!」と一言。
 プロは「後ろに下がって!」と叫ぶ。

 そう、興奮のあまり、私はロッドを立て過ぎていたのだ。

 数分後、魚が少し近づいて来ると、
 達人は「サクラはこれからローリングするから、気をつけて!」と適切なアドバイス。

 リールは逆回天し、ジーと鳴る。

 何せこちらはダブルハンドのビギナー。
 ましてや川で、こんな大物などフライで釣った経験はない。
 何がなんだかわからない。
 ただ私は何度も「二人の大先生の前で、なんで釣れるんだろう!」と叫んでいた。

 数分の後、ランディングできた。

 見れば、上あごにがっちりとフックしている。これなら、ばれるはずはない。
 傍らで達人は「なんで上あごに掛かるのか、、、?」と不思議がっている。

 彼自身の経験によると、上あごなどにフッキングした事はかつてないそうなのだ。
 確かにこれは、ドライフライへのフッキングかもしれない。

 それにしても、二人の上級者が入った同じ場所で、釣りはじめて一時間もしないうちに、いとも簡単に釣れてしまっ  たのは、いったいどういう事なのだろう。
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 これが釣りなのかもしれない。
 が、九頭竜川のサクラはめったな事では釣れるものではない。
  ましてや私はダブルハンドでフライをするのは、実質的に生まれてはじめてなのだ、、、。


 帰りの車の中でプロは
「サクラを掛けた話は、よく聞くが、実際釣り上げるのは至難ですよ」と言った。

 私に奇跡は二度起こってしまったのだった、、、、。

 


【 奇跡は起こった!   Part 3 】

 九頭竜川でのサクラマスは釣れません、と言っておきながら、自分では二匹も釣ってしまいました。
 しかし、これは全くの偶然、かつ非常にラッキーであったとしか言いようがありません。
  私は二匹もサクラを釣るほど、釣りは上手ではありませんし、そんなに九頭竜川に通っている訳ではありません。
 私よりもはるかに上手で、ここに何十回も通っているアングラーでも釣れない人は多くいるでしょう。
 ラッキーもラッキー、文字通り奇跡です。

 しかし、もうひとつ奇跡をご紹介します。
  三度も言って、奇跡なんて呼ぶな、という声が聞こえてきそうですが、
 すみません、私は敢えて奇跡と呼ばさせて頂きます。



 1995年の三月中旬、私達は岐阜へ釣りに行った帰り道、ちょっと遠回りをして、九頭竜川まで来た。

 同行のルアーウーマンは、ルアーフィシングに関しては、男達と勝負しても結構負けない位、運の良い(?)女性である。
  なぜか彼女のルアーには、トラウトがよくヒットする。
 日頃、湖などではよく釣る彼女だが、ここ九頭竜川ではサクラマスなど釣れる訳がない、と誰もが確信している。
   もちろん私もそう思っている。
  彼女は、特にサクラマス釣りを研究している訳でもないし、執着している訳でも全くない。

 ようするに、彼女は「何も考えていない、、、。」のである。

 ここは、そんな(差別的で恐縮ですが)女や、素人さんがやってみても釣れるわけがない、という事は皆知っている。

 そんなあまい釣り場ではないのである、ここは。



 昼前からルアー嬢はやり始めた。
 釣り始めて1時間半位が過ぎた頃、

「来たっ!!」とルアー嬢の大声が河原に響いた。

 私は、何を大声をだしているんだ、、、と思う。どうせウグイか何かだろうと決めつけていた。
 遠く彼女を見ると、やけに7フィートロッドが曲がっている。

 その日の朝、岐阜の某湖で彼女は、9フィートのダブルハンドロッドを折ってしまい、やむなく7フィートを使っていた。
 それにしてもバットからロッドは曲がり、ティップは激しく上下している。
 結構大きなウグイだなあ、と思った。あるいはニゴイかもしれないと。


 近くまで行くと、彼女は結構パニック状態だ。
 でも私は、「ウグイ、ウグイだよ」と冷静に彼女に言う。

 しかし、しかしである。ラインの先を見ると、銀色に輝く大きな魚が見えるではないか!!!

 私は焦ってしまった。
 一体これはどうしたことだ、あれはサクラではないか!

 私は「サクラだっ!!」と叫ぶ。

 あまりにも強い引きに、彼女はロッドを立てれなくなり、ロッドとラインが一直線になっている。
 私は「ロッドを立てて!」と大声。
 「ダメッ、立てれない!代わって!」と彼女の悲痛な声。

 こんなチャンスは二度とない、
 私は「ダメッ、自分でやれ!」と返答。

 どうも、リールのドラッグがきいていないようだ。
 私は急いで彼女のリールのドラッグをゆるめてやる。
 が、何という事だ、安物のアブ製リールのドラッグは壊れている。
 ラインはテンションが掛かりっぱなしだ。

 私は「ああ、もうダメだ、、、、」と確信した。
 彼女は必死に強烈なサクラの引きをこらえている。
 でも魚は流心に入ってしまった。

 私はもうこれで完全にダメだと思った。
 典型的なサクラのばらしだ。
 ましてや、リールのドラッグがきかないようでは話にならない。

 と思っていたら、魚はなぜか、再びこちらに走り出してきた。
 チャンス!運よく岸際に来た。

 しかしここの岸は崖になっていて、そのままランディングはできない。

 でも、肝心の大型ネットはない!
 渓流用の小型しかないのだ!!

 だいたい、サクラなど釣れる訳がない、と思い込んでいるので大型ネットの持ち合わせがないのだ。
 釣人としては恥ずかしい事だ。

 とにかく仕方ないので、私は小型ネットを背中から外し、構える。

 すると、信じられないことに魚は私の手のすぐ下まで来た。



 「えいっ」と、私は魚をすくった。

 −− 神は我々に微笑んだ。−−



 何と一発で大型のサクラマスを小型ネットにいれる事ができたのだ。

 銀色に輝く50センチオーバーのサクラマスは、ふるえる彼女の手の中にいた。


 ルアーのフックを見ると、半分以上伸びている。
 それも渓流用の10番位の小さなフックだ。よくもまあ、こんなもので釣れたものだ。

 ルアーは、14グラムの赤のタスマニアンデビルである。
 彼女の湖でのトラウト釣りには一番実績があったものだ。
 でも普通はここのサクラマス釣りに、こんなルアーなど使わないだろう。

 ましてや、ハリは渓流用の小さなものだ。完璧なるタックルで男達は挑戦しても、なかなか釣れるものではないのに、、、、。

 全ての幸運が重なって、とにかく釣れてしまった。
 それにしても、普通は100%ばれるパターンなのに、不思議としか言いようがない。
 諸悪条件が重なったにもかかわらず、よくもまあ釣れたものだ。

 彼女の釣り人生では、多分一生で最大のラッキーなことであろう。

 帰路、彼女は九頭竜川で数十連敗を続けている友人の男性宅に、はずむ声で電話していた。
 彼はサクラマス釣りをよく研究している、ルアーの上級者だ。

 その時、彼は何と思ったのだろうか、、、。fish02-0.jpg (6695 バイト)

 

 

 ◆ 九頭竜川やめました ◆

 
 前述の如く、世の中にはラッキーな方々(?)がいらっしゃいます。私も自分の釣りの実力に反して、二匹も夢のサクラマスを釣ることができました.。
  ですから、この川での釣りはもうやりません。やめました。
 
 でも、何故やめたのか本音を言いますと、ここでの釣りは余りにも厳し過ぎるからです。
 
 釣りという趣味を超えて、何か「修業」でもやっているかのような感じがするからです。
 
 年も行きましたが、川で一時間半位釣りをやったところでやめました。

何故やめるのか。それは、

     「釣れない、とわかっている釣りは余りにも辛い」からです。

 
 もちろん、いわゆるプロ級のフライマンならば、これに反論する方もいらっしゃるでしょう。『そんなことはない、釣れるんだ』という方も。
 
 でも私の周辺のフライマン、ルアーマンを見ていても、何度も言いますが、ここでサクラを釣ることは文字どおり至難です。私のような未熟なパワーウェッターでは、とても釣れません。
 
 じゃあ、腕を磨いて夢よ再び、と思っても肝心の魚は極端に少ないではありませんか、、。
 
 だいたい、三十回も四十回も通って何のあたりもない釣りなんて、そんな釣りはやりたくありません。
 
 私の極親しい、上級ルアーマンも三十数回ここに通ったところで、終了宣言をしました。彼は不運にもノーヒットで終わりました。ノーバイトです。彼はここでの釣りを深く研究していた人です。
 
 釣りという趣味は、いろいろ能書きを言っても、やはり「魚を釣るため」に存在しているのであって、「ほとんど釣れる可能性のない釣り」なんて、私は嫌です。


  ということで、私の九頭竜川通いは終わり。終了宣言です。
  あー疲れた。


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